中央臨床工学部のご紹介

中央臨床工学部の紹介VTR

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臨床工学部の概要

最新の医療機器には、人工知能(AI:artificial intelligence)や情報通信技術(ICT:information and communication technology)などを有した多機能で高性能なものもあり、日々進化し続けています。富山労災病院では、その高度化する医療機器を用いた治療時の操作支援、日常の安全使用における保守管理ならびに取り扱い方法の教育・指導などの必要性を重視し、令和2年2月1日より、臨床工学部から中央臨床工学部(院内標榜)に昇格し、運営を開始しました。中央臨床工学部は、森一朗麻酔科部長(医療機器安全管理責任者)のもと、3名の臨床工学技士(令和2年6月現在)により構成され、4階4A病棟側に人工呼吸器や輸液ポンプなどの高度管理医療機器を一元管理している医療機器管理センターに併設されています。医療機器管理センターでは、平成29年より医療機器管理システムを導入して、医療機器の保有(登録)状況、貸し出し状況、修理・保守点検(日常点検、定期点検等)状況、消耗医療材料(各種バッテリ、人工呼吸器回路等)を一括で管理しています。また、病院事務部門と密接な連携を図り、医療機器毎の資産管理番号とCE管理番号を連動させ、一枚のバーコードにて管理しています。
さらに診療部門と連携を積極的に図り、チーム医療の一員として安全な医療機器の操作や提供ができるよう信頼、期待される診療支援部門となるよう努めています。
また、医療安全や感染対策部門ともより緊密に連携することにより、院内外における医療安全情報を共有し、迅速・適切な医療機器の安全管理ならびに感染防止活動を推進しています。
中央臨床工学部では、全国労災病院臨床工学技士会や関連機関とも連携をとり、安心安全な医療機器の提供に努めてまいります。

医療機器管理センター貸出フロア(中央臨床工学部)
医療機器管理センター貸出フロア(中央臨床工学部)
医療機器管理センター返却・点検フロア(中央臨床工学部)
医療機器管理センター返却・点検フロア(中央臨床工学部)

臨床工学部の沿革

年 月内 容
平成21年 4月臨床工学技士 1名 採用
透析業務の開始
整形外科手術自己血回収業の開始
平成21年 5月旧病院1病棟3階の一部分を臨床工学室として用途変更
透析室から看護師 1名 配置転換
平成22年 1月臨床工学室(院内標榜)の 設置
平成24年 4月臨床工学技士 1名 採用
医療機器管理業務の拡大(保守点検の強化)
平成27年 6月心臓カテーテル治療、ペースメーカー治療業務の開始
平成27年11月病院新築移転により、医療機器管理センター等を設置した。
透析装置および周辺装置を一新した。
5B病棟ならびにHCU病棟を透析治療可能病棟とした。
平成29年 3月医療機器管理センターに医療機器管理システムを導入
平成29年 4月臨床工学技士 1名 採用
平成30年 4月臨床工学技士 1名 採用
令和 2年 2月中央臨床工学部に院内標榜を変更
令和 2年 4月眼科手術業務の開始
  現在に至る

中央臨床工学部の理念・基本方針

理念

医療機器を管理、操作するスペシャリストとして日々自己研鑽に努め、ワンランク上の臨床工学技士として、質ならびに安全性の高い医療支援、医療機器の提供、操作を目指します。

基本方針

  1. 医療機器における操作等の問い合わせには、真摯で迅速な解決に向けて対応します。
  2. 医療機器の保守管理に努め、安全に使用できる医療機器を提供します。
  3. 定期的な点検計画に基づく、保守点検を実施します。
  4. 医療機器は、念入りに清掃、保守管理し、患者様やスタッフに気持ちよく使用していただける状態を保持します。

臨床工学技士(Clinical Engineer)とは

臨床工学技士は、1987年5月に制定された「臨床工学技士法(※公布 昭和62年6月2日、施行 昭和63年4月1日)」に基づく医学と工学の両面を兼ね備えた国家資格です。臨床工学技士は、医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作および保守点検を行う事を業とし、他の医療従事者との連携を図り、医療機器を用いたチーム医療の一員として生命維持をサポートする診療の補助者であり、医療機器のスペシャリストです。

臨床工学技士ポスター
(ポスター提供:日本臨床工学技士会)

主な業務

中央臨床工学部では、「診療支援業務」「医療機器管理業務」「医療機器安全教育業務」の3業務を主に行っています。

診療関連業務

中央臨床工学部では、人工透析室を中心に血管造影室、中央手術部おいて、医師の指導の下、医療機器の操作などの診療支援を行っています。また、緊急による心臓カテーテル治療(PCI)、補助循環装置(PCPS、IABP)の操作および急性血液浄化療法などにも積極的に対応しています。診療支援業務の需要は年々増加傾向にあり、診療科からの依頼に最大限対応するよう努めています。

人工透析室(血液浄化)業務

慢性腎不全で腎臓の機能が低下すると尿の排泄ができなくなり、体内で産生された老廃物などが蓄積されます。そのため透析療法という腎臓の代わりをする治療が必要となります。透析療法は、通常週に3回程度4時間行われます。
中央臨床工学部では、この透析療法を実施する人工透析室の設計や機器の選定にも携わり、最新の多用途透析用監視装置を設置しました。さらにベッド数も患者数の増加により令和2年2月には、最新の多用途透析用監視装置を2台追加し、23床による体制となりました。多用途透析用監視装置には、全台BV計が搭載されており、至適透析治療を追求しています。

多用途透析用監視装置DCS-200Si(写真提供:日機装株式会社)
多用途透析用監視装置DCS-200Si(写真提供:日機装株式会社)
BV計(写真提供:日機装株式会社)
BV計(写真提供:日機装株式会社)

当院の透析関連装置は、透析通信システムFutureNetWeb⁺®にて治療条件、装置状態、患者体重等を管理されており、安全な治療、医療機器保守が可能となっています。

透析システム構成

また、災害時や装置異常が発生した場合には、警報通信システムの導入や当院防災センターでの警報監視連携により早期に警報を発見し、迅速な保守対応が可能なシステムを構築しています。

治療は、月曜・水曜 ・金曜日は午前・午後の2クール、火曜 ・木曜 ・土曜日は午前1クール対応しています。

  月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日
午前
午後      

中央臨床工学部では、人工透析室の医師及び看護師と連携し、慢性腎不全における血液透析(HD)、血液ろ過透析(HDF)による血液浄化療法施行の治療や血液浄化関連機器の操作を行っています。なかでも補充液として透析液を使用するオンライン血液濾過透析(online-HDF)の割合が多数占めています。

透析システム構成

その他、消化管穿孔による汎発性腹膜炎緊急手術後のエンドトキシン吸着や多臓器不全などの全身状態が悪い急性腎不全時の持続緩徐式血液濾過透析(CHDF)、その他アフェレーシス(血漿交換(PE)、血漿吸着(PA)など)といった特殊血液浄化療法の診療支援にも積極的に対応しています。治療には、血液浄化用装置(KM-9000)を使用しています。この装置も病棟で使用した場合、人工透析室の透析通信システムと連動するようカスタマイズされており、治療実施状況が、病棟外でもリアルタイムに確認することが可能となっています。

人工透析室
人工透析室
血液浄化業務(透析回路プライミング)
血液浄化業務(透析回路プライミング)
血液浄化用装置KM-9000
血液浄化用装置KM-9000
血液浄化業務(シャント穿刺)
血液浄化業務(シャント穿刺)

シャント管理や脱血不良などシャント血管に異常が疑われる場合には、超音波診断装置を用いてシャントエコー検査(US)を実施し、人工透析室スタッフに血管内の状態や走行など穿刺に必要な情報提供をしています。また、エコーガイド下シャントPTA(経皮的血管拡張術)の際には、超音波診断装置の操作を行っています。

血液浄化業務(シャントエコー検査)
血液浄化業務(シャントエコー検査)
重点実施項目!透析液の清浄化

中央臨床工学部では、透析液の清浄化を推進し、よりきれいな水質の透析液を供給するシステムの構築を行っています。透析液は、プライミング液や補充液として使用され、透析液配管等の最適な洗浄方法を追求し、逆浸透精製水製造システム等の装置を改良することで、細菌などによる水質汚染を防いでいます。また、他施設との相互間協力を行い、積極的に高度清浄化に取り組んでいます。透析液検査は、最新の透析液清浄化ガイドラインに則り、定期的にエンドトキシン活性値や細菌数を測定しています。

透析液清浄化(細菌検査)①
透析液清浄化(細菌検査)①
透析液清浄化(細菌検査)②
透析液清浄化(細菌検査)②
透析液清浄化(エンドトキシン活性測定)①
透析液清浄化(エンドトキシン活性測定)②
透析液清浄化(エンドトキシン活性測定)②

中央手術部業務

手術室では、人工関節置換術(TKA、THA)等における整形外科手術時の自己血回収を行っています。
また、令和2年4月より眼科手術における治療用装置の操作対応を開始しました。
今後も順次支援の拡大を予定しています。

自己血回収システム準備
自己血回収システム準備
超音波白内障手術装置操作
超音波白内障手術装置操作

血管造影室業務

心臓カテーテル業務

血管造影室では、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の有無を冠動脈造影(CAG)にて検査し、異常(冠動脈狭窄)が認められた場合には、経皮的冠動脈形成術(PCI)といった心臓カテーテル治療を行います。また、頻脈性の不整脈を治療するカテーテルアブレーションも行われており、それらの診療支援を行っています。
中央臨床工学部では、血管内超音波装置(IVUS)による血管内画像描出やポリグラフによる心電図モニタリング等を行っています。
さらに脳動脈瘤における血管内治療(コイル塞栓術)など脳神経外科領域における治療の介助も行っています。

 心臓カテーテル業務介助
心臓カテーテル業務介助
ポリグラフ操作
ポリグラフ操作
血管内超音波診断装置操作

ペースメーカー業務

洞不全症候群や高度な房室ブロックなどでペースメーカーを埋め込みする際やペースメーカーを装着された患者様がMRI検査を受けられる際のペースメーカープログラマーの操作等を行っています。
さらに脳動脈瘤における血管内治療(コイル塞栓術)など脳神経外科領域における治療の介助も行っています。

ペースメーカー用プログラマー操作
ペースメーカー用プログラマー操作

病棟業務

呼吸療法業務

人工呼吸の目的は、適切な換気量の維持、酸素化の改善、呼吸仕事量の軽減であり、呼吸管理の目標は人工呼吸器からのウィニング(離脱)と予後の改善です。この目標に到達するために、合併症の予防と安全管理を十分に行いながら人工呼吸管理を実施することが重要です。様々な病態での呼吸不全等により人工呼吸器装着が必要になった際の装置準備ならびに設定条件の補助を行っています。
心不全における陽圧換気療法(ASV)治療時の患者様へのマスクの調整や機器操作の指導も行っています。

人工呼吸器使用中点検(病棟にて)
人工呼吸器使用中点検(病棟にて)

マスク式人工呼吸器(オートセットCS)
マスク式人工呼吸器(オートセットCS)

補助循環業務

救急外来等における大動脈バルーンパンピング(IABP)や経皮的心肺補助(PCPS)などの補助循環装置の組み立て、準備ならびに操作・管理を行っています。

大動脈バルーンパンピング装置(IABP)保守点検
大動脈バルーンパンピング装置(IABP)保守点検
PCPSシステム(写真提供:テルモ株式会社)
PCPSシステム(写真提供:テルモ株式会社)

医療機器管理業務

中央臨床工学部では、医療機器管理システムを導入し、生命維持管理装置を含む法令・通知等により指定された医療機器、特定保守管理医療機器・高度管理医療機器において、医療機器別に定期保守点検計画を策定し、適切に実施・記録しています。さらに、医療機器やそれらの使用に必要な消耗品の一元管理(共同使用)することによる稼働(使用)効率の最適化(不要在庫抑止)に努めています。
また、医療機器稼働に際して、カテゴリー別(使用前、使用中、使用後)に保守点検を行っています。病棟において使用されている場合には、ベッドサイドにて医療機器の動作に不具合がないかを点検しています。
手術室や内視鏡、各診療科などにおける医療機器のトラブルが発生した場合には、臨床工学技士が迅速に修理や点検対応しています。
臨床工学技士が保守管理する対象医療機器を順次増やしていく予定としています。

保守管理している医療機器 台 数
輸液ポンプ 54
シリンジポンプ 31
PCA機能付きシリンジポンプ 5
経腸栄養ポンプ 5
人工呼吸器 8
人工呼吸器 2
可搬型人工呼吸器 2
除細動器 10
体外式自動除細動器 6
医用テレメータ― 14
生体情報モニター 38
心電計 4
多用途透析用監視装置 21
個人用多用途透析装置 3
透析用水作製装置
逆浸透法精製水製造システム 1
全自動溶解装置 1
多人数透析液供給装置 1
透析通信システム 1
透析液中エンドトキシン測定装置 1
浸透圧分析装置 1
電解質分析装置 1
全自動血液ガス分析装置 1
血液浄化用装置 2
補助循環用バルーンポンプ駆動装置 1
経皮的循環補助システム 1
電動式低圧吸引器 2
ポンプテスタ 1
医療機器管理システム 1
その他 多数

※中央検査部、中央放射線部等の医療機器は除く。

医療機器管理センター
医療機器管理センター
輸液ポンプ修理
人工呼吸器5000時間部品定期交換
人工呼吸器5000時間部品定期交換
ポリグラフ点検
全自動溶解装置オーバーホール
全自動溶解装置オーバーホール
電気メス出力点検
電気メス出力点検

医療機器安全教育業務

厚生労働省や関連医療機器団体等から情報収集したり、院内における医療機器の取り扱い講習や研修会を計画・実施したりして、医療スタッフが医療機器を安全に使用できるように努めています。研修会は、年間約50回実施しています。全職員を対象としたものだけではなく、1名の医療スタッフからの疑問にも研修会を実施しています。
また医療機器安全管理体制を構築するために、インシデントの分析を行い事故防止策の立案等を医療安全管理者や医薬品安全管理責任者とともに医療安全推進委員会にて、医療機器の不具合情報等を報告し、医療事故防止に努めています。

除細動器操作研修会
除細動器操作研修会
大動脈バルーンパンピング装置研修会

AED設置場所

富山労災病院では、自動体外式除細動器(AED)を4か所に設置しています。

設置場所

  1. 1階総合案内
  2. 2階リハビリテーション室
  3. 4階4B病棟
  4. 6階6A病棟
AED設置(総合案内)
AED設置(総合案内)

中央臨床工学部のスタッフ

部長兼医療機器安全管理責任者
(麻酔科部長) 森 一朗

部長兼医療機器安全管理責任者
(麻酔科部長)
森 一朗(もり いちろう)
【専門】
麻酔科全般
【資格】
日本麻酔科学会専門医
日本ペインクリニック学会専門医


臨床工学技士 部長(技)齊藤 実

臨床工学技士 部長(技)
齊藤 実(さいとう みのる)
【専門】
代謝機能代行技術学、循環機能代行技術学、臨床生理学
【資格】
臨床工学技士国家資格
臨床検査技師国家資格
第2種ME技術者
第1種衛生管理者 等


臨床工学技士 高見 彰男

臨床工学技士
高見 彰男(たかみ あきお)
【専門】
臨床工学全般
【資格】
臨床工学技士国家資格


臨床工学技士 塚本 嗣音

臨床工学技士
塚本 嗣音(つかもと しおん)
【専門】
臨床工学全般
【資格】
臨床工学技士国家資格
第2種ME技術者

公益社団法人日本臨床工学技士会(https://www.ja-ces.or.jp/)

病院実習・見学について

富山労災病院で臨床工学実習または病院見学を希望される方は、各校の指導教官を通じて、総務課まで電話(0765-22-1280)または当院ホームページ各種問い合わせフォームにてお申し込み下さい。