膀胱脱、子宮脱への手術

子宮を摘出せずに小さな傷口で治す、メッシュ利用修復手術(TVM手術)は、従来の膀胱脱、子宮脱手術と比べ再発しにくいのもおおきな利点です。

泌尿器科 石浦 嘉之(泌尿器科部長)

膀胱脱、子宮脱とは?

膀胱脱や子宮脱、直腸脱、膣断端脱等を総称して骨盤臓器脱といいます。
 女性骨盤底筋の緩みや出産に伴う損傷等によって加齢とともに膀胱や子宮など骨盤内臓器が膣口から体外に脱出することがあります。昔は膣口から膀胱や子宮が垂れ下がって脱出している状態を「なすび」と呼んでいました。その「なすび」こそが骨盤臓器脱なのです。(図1.膀胱脱、図2.子宮脱、図3.膀胱脱と子宮脱の合併)

図1
図2 子宮脱
図2
図3 膀胱脱と子宮脱の合併
図3

どういった症状があるの?

恰好が悪く安心して温泉に行けない、擦れて痛んだり出血するといった問題があります。また膀胱が体外に脱出するために排尿困難や尿失禁、頻尿などといった問題も引き起こします。膀胱造影検査を行うと膀胱が体外まで脱出していることははっきりわかります。(図4.白くひょうたん型に写っているのが膀胱。下側は骨盤外に脱出している)

図4 膀胱
図4

これまではどうしていたの?

人間が二本脚歩行を行う以上骨盤底に荷重が加わります。痛んだ骨盤底が自然と改善することはありません。
 従来は子宮を摘出して周囲の靭帯や組織を締め上げる手術で脱出した骨盤臓器を挙上しておりました。しかしこの方法では再発率が高い(20-40%)、膣内腔が通常よりも狭くなり、性行為が困難になるなどの問題がありました。

当院で行っているTVM手術について

そこでメッシュを利用したTVM手術が開発されました。本邦では2011年に正式に保険診療として認可されました。メッシュを膀胱の背側に留置して子宮頚部と固定することにより骨盤内に臓器をとどめることが可能となりました。(図5.青いのがメッシュ)
大陰唇両脇に5mm程度の小さな傷を4~6か所作成する必要があります。(図6.青いのが皮膚小切開部分へと連なるメッシュの脚部分)
手術前には体外に脱出している骨盤臓器脱が術後は膣内におさまっている様子を比較しました。(図7)
従来の手術と比較してTVM手術は、子宮を摘出しなくてよい、膣がいびつな形にならない、小さな傷口でなおる、再発しにくいなどといった利点があります。
TVM手術は熟練した手術手技を必要とします。当院では手術に精通した医師が手術を行っております。現在のところ当院で手術を受けられた方の再発はゼロです。また術中出血過多や術後感染などといった問題も生じていません。当院では約1週間程度の入院で対応しております。

図5 メッシュ
図5

図6 メッシュの脚
図6

図7 従来の手術と比較してTVM手術

図7